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HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)について ~その③~

 皆さんこんにちは、副院長の齊木です。前々回はHbA1cの基本について、前回はHbA1cの目標と注意点についてお話してまいりました。今回はHbA1cの値が実際の血糖値と乖離して参考値となってしまうときはどんなときか?また他の血糖値の平均状態の指標としてグリコアルブミンについてお話ししたいと思います。

 

HbA1cを題材にブログを3本も書いているところはなかなかないと思われますが、様々な採血検査項目がある中でもHbA1cは過去数ヶ月の平均的な血糖値の状況を反映するというかなり特殊な検査項目であり、正確な評価をするために他の検査項目の結果やさまざまな情報収集が必要ということ、そして患者さんの血糖値の状況を評価する上で絶対的なものではないことを知ったうえで正しく利用することが肝要です。

 

HbA1cについては昨今SNSなどでもよく取り上げられますが、こうした注意点を述べられているものがほとんどなく、注意喚起の意味も込めて情報提供しております。糖尿病の世界ではこうした数値一つで患者さんは一喜一憂されます。しかしながら不用意にショックを受けたり不安になる必要はありませんし、そのためにも正しく検査結果は評価されるべきものです。そもそもこうした検査結果はよりよく体調維持するためのきっかけになるべきものですから

 

さて、実際にHbA1cを正しく判定することが難しくなる時はどんな状況かといいますと、、、

それは赤血球の寿命が変化するときです。赤血球の寿命が平均的に120日前後である性質を利用した評価項目ですので当然といえば当然のことなのですが、いつの間にかそうした大前提はむしろ忘れられているように思います。特に閉経前の女性の場合は定期的に出血するため、その評価は慎重に行われる必要がありますし、出血してHb(ヘモグロビン)自体が減ってしまうとその程度や回復具合によって本来よりも低くなったり高くなったりもします。腎機能や肝機能が悪くなるとほぼ低く見積もられるようになりますので、実際の血糖値の動きにより注目する必要があります。実話ですが血糖値が400mg/dlを超えるような明らかな異常を示していたにもかかわらず極度の貧血がベースにあったためHbA1cが正常範囲に入って見過ごされていた方もおりました。そのためHbA1cを評価する場合は貧血の有無についても必ず評価する必要があるのです。

 

 実際に貧血によってHbA1cを評価することが難しい場合はそんなに少なくはありません、そのような場合は他の検査項目を利用します。HbA1cに代わる指標として最も使用頻度が高いものがグリコアルブミンです。グリコアルブミンもHbA1cと同様に糖化たんぱく質ですが、アルブミンの半減期が2~3週間であるため2~3週間前から採血時までの平均血糖を反映します。より血糖の動きに鋭敏に反応し、血糖の変動が大きいほど高くなる傾向がありますので、変動の少ない質の高い血糖コントロールを目指す場合に良い指標となります。ただし、ネフローゼ症候群やステロイド治療時など、アルブミン自体の代謝速度が変動する場合には正確に評価ができないですので、両者一長一短あると知り、時と場合によってうまくこの2つの指標を使い分けることが理想的と考えられます。

 

最後に、血糖の平均指標と呼ばれるHbA1cもグリコアルブミンもあくまで平均指標であって血糖値ではないですので、それだけでは糖尿病の診断はできないことになっていますし、やはり実際の血糖値の評価をおろそかにせずバランスの良いコントロール状況の維持を目指すことが重要であると考えます。

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