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パンデミックによる血糖値への影響について考える

ロックダウン!、外出禁止!、そんな言葉が一時期世間をにぎわしておりました。

コロナが流行り出して早三年、いまだ好きなように活動できない、周りにより気を遣わざるを得ないなど、ストレスを感じることはまだまだあるかとは思いますが、徐々に自由度を上げていける流れにしていきたいものです。

 

今回のブログではこのパンデミック期における人の行動の変化と血糖値への影響について当院通院中の患者さんたちに起きた変化を紹介しつつ、私なりの考えを述べたいと思います。実際最近報告された論文で若年者の新規糖尿病発症率がこのパンデミック期で増加したとされているため、この状況下でもうまくバランスをとるためにどうすべきでしょうか?!。

 

まず、行動制限によって老若男女問わず多くの人の身体活動の自粛を余儀なくされたかと思いますが、実際に私が診ている患者さんの多くが一定の血糖上昇、また体力低下を認め、さらにはメンタル面での支障を来たす方も複数いらっしゃいました。活動量が減れば当然エネルギーの燃焼機会が減るわけですから、血糖が上昇するのは容易に想像できるかと思います。しかし容易に想像できるということは、言い換えれば容易に対策を考えるという流れができるべきで、普段から体力維持するための意識を持ち続ける必要があります。ちなみにこのパンデミック期に逆に血糖コントロールが改善した方の多くはそれまで帰宅が遅く夕飯が遅れ空腹時間が長くなっていた方々で、テレワークに移行したことにより食べたいときに食べられるようになり、夕食が理想的なタイミングに前倒しされ、また運動したいタイミングで運動できるようになっていました。理想論はわかっていても、実際には社会生活を送る上では自分自身の都合の良い生活リズムを維持するのは困難です。ほとんどの方々が数多の他人の都合に翻弄されることが日常ですので、私自身も患者さんそれぞれのライフスタイルを客観的に捉え、それを踏まえて負担の少ない、継続しやすい指導を行うことの重要性をあらためて感じました。ちなみに食事のタイミングは3回が最も良いとかそんなエビデンスはありません、結局必要なタイミングで過不足なく摂取することが理想です。つまり生活次第で望ましい食事タイミングも内容も変わるべきということです。

 

家にこもって大人しく怯えるほど心身ともに悪循環をもたらします。事実特効薬もないままほとんどの方が自力で回復されていることからも、如何に自分自身の免疫機能を良好に保つ工夫ができるか勝負です。私自身はそうした部分で引き続き個人個人に適したアドバイスができるよう配慮していきたいと思います。皆さんも今の生活を振り返り、少しでも前向きな工夫をしてみてくださいね。

では

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)について ~その③~

 皆さんこんにちは、副院長の齊木です。前々回はHbA1cの基本について、前回はHbA1cの目標と注意点についてお話してまいりました。今回はHbA1cの値が実際の血糖値と乖離して参考値となってしまうときはどんなときか?また他の血糖値の平均状態の指標としてグリコアルブミンについてお話ししたいと思います。

 

HbA1cを題材にブログを3本も書いているところはなかなかないと思われますが、様々な採血検査項目がある中でもHbA1cは過去数ヶ月の平均的な血糖値の状況を反映するというかなり特殊な検査項目であり、正確な評価をするために他の検査項目の結果やさまざまな情報収集が必要ということ、そして患者さんの血糖値の状況を評価する上で絶対的なものではないことを知ったうえで正しく利用することが肝要です。

 

HbA1cについては昨今SNSなどでもよく取り上げられますが、こうした注意点を述べられているものがほとんどなく、注意喚起の意味も込めて情報提供しております。糖尿病の世界ではこうした数値一つで患者さんは一喜一憂されます。しかしながら不用意にショックを受けたり不安になる必要はありませんし、そのためにも正しく検査結果は評価されるべきものです。そもそもこうした検査結果はよりよく体調維持するためのきっかけになるべきものですから

 

さて、実際にHbA1cを正しく判定することが難しくなる時はどんな状況かといいますと、、、

それは赤血球の寿命が変化するときです。赤血球の寿命が平均的に120日前後である性質を利用した評価項目ですので当然といえば当然のことなのですが、いつの間にかそうした大前提はむしろ忘れられているように思います。特に閉経前の女性の場合は定期的に出血するため、その評価は慎重に行われる必要がありますし、出血してHb(ヘモグロビン)自体が減ってしまうとその程度や回復具合によって本来よりも低くなったり高くなったりもします。腎機能や肝機能が悪くなるとほぼ低く見積もられるようになりますので、実際の血糖値の動きにより注目する必要があります。実話ですが血糖値が400mg/dlを超えるような明らかな異常を示していたにもかかわらず極度の貧血がベースにあったためHbA1cが正常範囲に入って見過ごされていた方もおりました。そのためHbA1cを評価する場合は貧血の有無についても必ず評価する必要があるのです。

 

 実際に貧血によってHbA1cを評価することが難しい場合はそんなに少なくはありません、そのような場合は他の検査項目を利用します。HbA1cに代わる指標として最も使用頻度が高いものがグリコアルブミンです。グリコアルブミンもHbA1cと同様に糖化たんぱく質ですが、アルブミンの半減期が2~3週間であるため2~3週間前から採血時までの平均血糖を反映します。より血糖の動きに鋭敏に反応し、血糖の変動が大きいほど高くなる傾向がありますので、変動の少ない質の高い血糖コントロールを目指す場合に良い指標となります。ただし、ネフローゼ症候群やステロイド治療時など、アルブミン自体の代謝速度が変動する場合には正確に評価ができないですので、両者一長一短あると知り、時と場合によってうまくこの2つの指標を使い分けることが理想的と考えられます。

 

最後に、血糖の平均指標と呼ばれるHbA1cもグリコアルブミンもあくまで平均指標であって血糖値ではないですので、それだけでは糖尿病の診断はできないことになっていますし、やはり実際の血糖値の評価をおろそかにせずバランスの良いコントロール状況の維持を目指すことが重要であると考えます。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)について ~その②~ 

前回はHbA1cとはどういったものなのかについてといった内容でしたが今回はHbA1cの目標と注意点についてお話ししたいと思います。

 

HbA1cの目標値の設定はそもそも何を目的としているかについて考える必要があります。そのためには患者さんの年齢や病状、生活状況、認知機能や時には性格的なことも把握しなければいけません。

 

一般的に糖尿病管理における至上命題は合併症を抑止することにあります。よく知られているHbA1c<7%の目標設定はこれらの合併症予防を目的としたものです。ちなみに合併症には網膜症、腎症、神経障害の糖尿病三大合併症と言われるものから動脈硬化や感染症といったものまで幅広く存在します

 

できるだけ健常人と同等の健康状態を目指す場合はHbA1c<6.5%程度までコントロールする必要がありますが、糖尿病の重症度が高い方(インスリン分泌能が低くインスリンに依存するような方、インスリン分泌促進薬の使用を余儀なくされているような方)やすでに合併症が進行している方、高齢の方、特に認知機能に問題があるような方の場合は低血糖の危険性が高まる、もしくは低血糖自体による合併症の危険があるためむしろそこまで下げないような配慮をする必要があります1度でも重症低血糖を起こすと不可逆的な脳のダメージが起き、認知機能低下につながることが報告されています

 

結局、生活環境から糖尿病の状況含めて個人差の大きい世界ですので、本来患者さん毎に目指すべきコントロール状況は異なるべきですが、目安のない世界では管理のしようがないため上記のような目標設定がなされたわけです。

 

理想的な血糖管理の状態とは血糖値の変動が少なく、また全体的に血糖値が下がった状態です。HbA1cはあくまで平均値ですのでこの変動の大きさについては捉えられません。私が普段何を注意しているかといえばこの血糖値の動きをできるだけ捉えられるように情報収集をすることです。

 

HbA1cは指標であってHbA1cだけでは血糖管理の詳細を知ることはできませんので、実際の血糖値と、また生活スタイル、食事タイミング、使用薬剤の種類などと合わせて血糖値の動きをイメージしつつ経過をみていく必要があることを皆さんも知ってくださいね。

→HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)について ~その③~ に続く

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)について ~その①~

こんにちは、さいた脳神経・糖尿病クリニック副院長の齊木です。

4月に常勤医として着任して1ヶ月が経過しました。まだまだ慣れないことも多く、来院して下さっている皆さんにご迷惑おかけしていることもあるかと思われますが、少しずつ慣れ、診療に集中できる状況になってきております。それでも何か気になった点などございましたら気兼ねなくご指摘下さい!

 

ところで今回のブログですが血糖のコントロール状況の指標になるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)について語りたいと思います。

 

今となっては健康診断や人間ドックなどでも一般的に行われるようになった検査ですが、それ以前は血糖値や尿糖で糖尿病の有無、血糖管理状況を推測するしかありませんでした。

健診の目的は疾病の早期発見であるわけですが、こと糖尿病においては初期段階では食後のみの血糖値の上昇にとどまることが多く、通常行われる空腹時の採血検査では見逃される可能性があります。こうした問題を解消するべくHbA1cは開発されました。

 

 HbA1cの値の意味することは過去1~2か月の血糖値の平均状態とされています。正常値は5.5~6.0%で6.5%を超えた場合は糖尿病が強く疑われるといったものです。我々糖尿病専門医は通常山ほどの血糖値の推移とHbA1cと本人の体格や生活状況とにらめっこしながら経験値を積んできましたのでHbA1cをみると大体の血糖値の状況がわかりますが、実際の血糖値と比べてかけ離れた値ですので大抵の方は関連付けにくいものと思われます。

 

 そもそもヘモグロビンエーワンシーという言葉自体が耳に馴染みなく、覚えにくい問題もあるのですが、これはそもそも何なのかといいますと、、、

まず私たちの血液が赤い理由は赤血球という細胞によるのですが、この赤い成分はさらにヘモグロビンというタンパク質の存在によるものです。このヘモグロビンのうちブドウ糖と結合したものが何パーセント存在しているか?というのがHbA1cの実態なのです。ヘモグロビンに一旦ブドウ糖が結合するとこの細胞が壊れるまで離れることはありません。赤血球の寿命は平均120日であることから半減期である2か月程度の平均的な血糖状況が推測されるという寸法です。

 

→HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)について ~その②~ に続く

あらためまして

あらためましてこんにちは、さいた脳神経・糖尿病クリニック副院長の齊木です。
事前にホームページ上でもお伝えしておりましたが、2022年4月1日より当院での診療を本格的に開始しました!

専門は糖尿病から生活習慣病全般、そしてバセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患をはじめとした内分泌疾患全般です。基本的に内科全般に関わる領域ですので何か気になることがございましたら気軽にご相談いただければと思います。

今まで20年ここ横浜市青葉区で診療を続けてきました。馴染みあるこの地の地域医療に少しでも貢献できるよう努めてまいりますのでよろしくお願いいたします。

また今後はブログにて当院の特色や医学情報なども含めて定期的にお伝えさせていただきますね。

さいた脳神経・糖尿病クリニック

齊木 亮 拝

健康診断について

皆さんこんにちは、副院長の齊木です。

いかがお過ごしでしょうか?だいぶ寒くなってきましたね!

今回のブログでは健康診断の意味について自分なりに思っていることをお伝えしようと思います。

 

まず何を目的として健康診断を受けるのか?漠然と言われるがまま受けてらっしゃる方も少なくないと思います。私は健康診断の目的は大きく二つあるように考えていて、まずは癌などの悪性腫瘍などの疾患を症状がみられる前に見つけて、できるだけ体への負担の少ない形で、できるだけ早い段階で行うということです。それでも実際のところは癌を確実に早い段階でみつけることは難しく、私自身も何度もそれを思いしらされてきました。それでもたまたま健康診断で問題が発覚し、精密検査を受けて完治された方も多くいらっしゃいます。癌などは見つかることが恐いとか不安が当然あろうかと思いますが、本来治療可能な状態で見つけられたものが放置されて治療不可能な状態になるほうがもっと恐いですし、後悔をすることになりかねません。癌などは一種の老化現象であると考えることもできますので中年以降にさしかかりましたら是非受けていただきたいと思います。

 

二つ目の目的は動脈硬化による脳血管や心血管のトラブルや不整脈など心疾患による問題を回避することです。これらの問題は何十年もかけて徐々に進行するもので、遺伝的な要素ももちろん関わりますがそれよりも生活習慣に大きく依存します。また痛みを伴うなどの負担もほとんどなく進んでいきますので、健康診断の意味合いが非常に大きくなります。人の体は年と共に衰え、様々な問題を生じることは当然のことではありますが、その進行スピードは確実に遅くすることができます。逆に早めることも容易です。たとえば本来必要なエネルギー以上に食事を摂り続ければ、その分老化が進行することが知られています。少なすぎても問題ですし、ちょうどよいバランスが存在します。元気に生活するための工夫は必ず存在するものです。健康診断で評価するものは、レントゲン検査、心電図検査、採血、採尿検査などが一般的ですが、これらの情報だけで多くの生活上の問題点や改善点を見出すことができます。そうした結果に対して、運動や食事、はたまた仕事中の過ごし方、休日の過ごし方など様々な点で工夫できることがあります。アドバイスも同様に多角的な視点で行うことが可能ですので是非お気軽にご相談ください。ときにはストレスをうまく回避するためのアプローチなどもお伝えすることがありますが、病は気からという言葉は現在では科学的にも実証されている事実です。身も心も元気で初めて前向きに生活できますからね。

 

冬は空気が乾燥して気道の粘膜の保護機能も破たんしやすいですし、屋内屋外とで気温差が大きくなるので体温調節にも負担がかかりやすく体調を崩しやすいので十分工夫してお過ごしいただければと思います。それでは

副院長 齊木 亮

たくさんのお花

2021年10月26日に開院致しました、さいた脳神経・糖尿病クリニック、院長 板谷一宏です。

開院に先立ち、10月16日・17日に内覧会を行いました。内覧会から開院までの期間、たくさんの方からお祝いをいただきありがとうございます。

さまざまな方達に支えられていることを実感すると共に、身が引き締まる思いです。

すでに開院から2週間近く経過しており、ご挨拶が遅くなりましたが、少しでも地域の皆様のお役に立てるよう頑張ってまいります。

どうぞよろしくお願いいたします。

ホームページを公開しました。

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こちらでブログを更新してまいります。

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