糖尿病

糖尿病とは

糖尿病は血糖値が高くなる病気ということはよく知られています。しかしこれだけでは理解が深まりません。糖尿病に伴う異常の本質は膵β細胞から分泌されるインスリンの作用不足から生じるエネルギーの利用障害です。
人が生きるために必要なエネルギー源であるブドウ糖がうまく体の細胞に供給、貯蓄できなくなってしまった結果として血液中にブドウ糖があぶれてしまい血糖値が上昇、糖尿病へと至るのです。エネルギーがうまく利用できなくなるため、本来の体の正常な機能が果たせなくなり全身に影響が生じます。また血糖値が上がること自体による影響も現れます。
失明や壊疽、人工透析さらには心筋梗塞、脳梗塞など様々な合併症が知られていますが、基本的には細胞レベルの機能が不十分となるため免疫機能が低下するなど全身に及ぶ障害を起こす病気であることを知る必要があります。しかし、糖尿病になってしまった後でも、適切な治療や生活習慣の改善などを行うことで、十分健康な人と同じように過ごすことも可能です。
糖尿病の世界では糖尿病教育という言葉が当たり前に存在するほど、正しい知識を身につけることが何より重要です。人は知らないことで必要以上に不安になったりストレスを抱えるものですので、気兼ねなくなんでもお尋ねください。
また血糖値のコントロールや定期的な検査、生活習慣の改善などをあきらめずに行うことは、様々な合併症を防ぐことにもつながりますが、何より体の調子を整えて元気な毎日を過ごすことが一番の目的であることを忘れないようにしてください。
ただし合併症は一旦進行すると回復は難しいため、糖尿病だと分かり次第、早めに治療と生活習慣の改善などを行うことをおすすめします。

初めて受診する方へ

既に糖尿病の治療を受けている方

  • ご来院いただく際は、お薬手帳または現在服薬している薬をお持ちください。
  • 今まで受けた検査の結果用紙がお手元にありましたら、お持ちください。

これから糖尿病の治療を受ける方

  • できるだけ前日の21時以降は何も食べずに、翌朝お越しください。
    ※水・緑茶は飲んでも問題ありません
  • 来院時には、お薬手帳または現在服薬している薬をお持ちください。

診察の流れ

1受付

受付保険証を受付窓口へ提出いただいた後に、問診票の記入をお願いしております。

2予診

予診始めに、体調やお悩みの症状などを看護師へお伝えいただいた後に、診察室で医師がお答えいたします。些細なこともお気軽にご質問ください。

3検査

検査血液検査や尿検査、胸部レントゲン検査、心電図検査などを行います。行う検査は、患者さんの症状や疾患などを考慮し、必要な検査を選択します。

4診察

診察検査結果からわかる現在の体調や症状について説明した後に、今後の診療方針についてご相談させていただきます。説明は医師が極力平易な表現を用いて、わかりやすく説明するよう努めます。診療の最後には次回の予約をお取りするため、ご都合のつく日時をお伺いします。

5食事指導・相談

食事指導・相談糖尿病専門医が普段の食事内容についてヒアリングします。ヒアリング後には、患者さんのライフスタイルに合った食事方法を丁寧に指導いたします。
食習慣の改善は、同居しているご家族のご協力も重要です。そのため、実際に調理されているご家族の方が同行していただけると治療がより効果的です。

6会計

会計診察券と保険証、処方せんをお渡しした後に、お会計となります。会計後は調剤薬局へ処方せんを提出していただき、お薬を受け取ってください。
※処方せんの有効期限は、発行日を含めて4日以内になります。有効期限内に受け取れないと、再度処方せんを発行する費用が発生するため、必ず期限内にお受け取りください。

検査にかかる時間

検査は内容によって異なりますがおおむね1~2時間ほどかかります。糖尿病の有無を調べるために経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行う方の場合は、3時間前後かかります。予めご了承ください。

再診の方へ

診察券と保険証、お薬手帳を忘れずにご持参ください。

1受付

診察券と保険証を受付窓口へご提示ください。

2予診

体調や症状などを看護師へご質問いただいた後に、診療時に医師がお答えします。
どんな内容でもお気軽にご質問ください。

3検査

基本的に血液検査と尿検査を行います。また、レントゲン検査や心電図検査、動脈硬化検査や骨密度検査なども必要に応じて行う場合があります。

4食事指導・カウンセリング

食事指導・カウンセリングは、毎回の受診時に行う場合があります。検査結果の待ち時間などを利用するため、再診の患者さんでしたら5~10分程度で完了します。食事指導・カウンセリングは、ご家族の方と一緒に受けていただくことも可能です。
糖尿病を含め生活習慣病を抱えている患者さんを対象にしておりますが、生活習慣病にかかっていない患者さんでも、ご希望があれば医師・スタッフへご相談ください。

5運動指導・相談

無理なく継続できて、かつ身体に負担・ケガをしにくい運動方法やその意義などを、指導いたします。なお心臓に異常が起きている方、糖尿病性網膜症を含め合併症が進行している場合は運動自体による病状悪化の危険もありますので注意が必要です。

6診察

検査結果を確認しながら現在の健康状態や今後の治療について、医師が丁寧にかつ分かりやすく説明します。
前回処方した薬が残っている際は、適切な薬の数になるよう調整いたします。「薬が飲みにくい」などお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
次回の予約を診療時にお取りすることも可能ですが、後日に電話予約していただくこともできます。

7会計

診察券と保険証、処方せんを受付窓口でお渡しした後に、お会計となります。診察券は毎回の受診日に、保険証は「毎月初めの受診日」にお持ちください。会計後は調剤薬局へ処方せんを提出していただき、お薬を受け取ってください。
※処方せんの有効期限は、発行日を含めて4日以内になります。有効期限内に受け取れないと、再度処方せんを発行する費用が発生するため、必ず期限内にお受け取りください。

1型糖尿病と2型糖尿病

1型糖尿病

おもに自己免疫を基礎にした膵β 細胞の破壊性病変によりインスリンの欠乏が生じて発症する糖尿病です。遺伝因子に加えてウイルス感染などの何らかの誘因・環境因子が加わって発症します。
また橋本病をはじめとした他の自己免疫疾患の合併が少なくありません。膵β 細胞が進行性に破壊され、最終的にインスリンの絶対的な欠乏に陥ることが多く、インスリン注射が必要となります。典型的には若年者に急激に発症するとされてきましたが最近になりあらゆる年齢層に起こり得ることもわかってきました。
多くの症例では発病間もない頃に膵島抗原に対する自己抗体(膵島関連自己抗体)が証明でき、この場合を「自己免疫性」、自己抗体が証明できないままインスリン依存状態に至る場合は「特発性」と呼びます。発症、進行の様式によって、劇症、急性、緩徐進行性に分類されます。日本での年間発症率は1.5-2.0/10万人とされ、発症者数は毎年約500人と推定されています。

2型糖尿病

いわゆる糖尿病はこの2型糖尿病です。インスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす複数の遺伝因子に、過食・運動不足などの生活習慣、またその結果としての肥満が環境因子として加わりインスリン作用不足を生じて発症する糖尿病です。
インスリン分泌低下とインスリン感受性低下の両者が発病に関わり、双方の関与具合は人によって様々です。インスリン注射を必要としない糖尿病の大部分がこれに当たります。膵β細胞機能はある程度保たれており、インスリン注射が必要になることはまれですが、インスリンの分泌機能は年齢と共に低下するため、インスリン依存に至る方もいます。
インスリン分泌については特に糖負荷後の早期の分泌反応が低下しますので早食いや吸収効率の高い糖質を摂取する場合は注意しなければいけません。肥満があるか、過去に肥満歴を有する方が多く、最近は小児・若年者の肥満率が上がっていることが問題になっています。

インスリンの働き

インスリンの働き糖尿病を理解するうえでインスリンの作用を知ることは最も重要です。インスリンは、栄養素の同化を促進し、筋肉、脂肪組織、肝臓に取り込みます。
インスリンが作用するのは、主に、筋肉(骨格筋、心筋)、脂肪組織、肝臓です。この中で、骨格筋は、ブドウ糖利用の約70%を占めるので、骨格筋にインスリン感受性があることは、インスリンが血糖降下作用を現わす上で重要です。

1).糖質代謝に対する働き 
→ ブドウ糖の細胞内への取り込みを促進させる

インスリンはグルコースをエネルギー源として筋肉細胞に取り込み、また余分なブドウ糖はグリコーゲンとして筋肉や肝臓に貯蔵、また中性脂肪として脂肪組織にも貯蔵させる。糖新生(肝臓からブドウ糖を血液中に供給する流れ)は抑制される。

2).たんぱく質代謝に対する働き
→ たんぱく質の合成を促進させる

インスリンは骨格筋に作用して、たんぱく質の合成を促進させ、分解を抑制する。

3).脂質代謝に対する働き
→ 脂肪の分解を抑制する

インスリンは、脂肪細胞内の中性脂肪の分解を抑制し、血漿中のリポ蛋白中の中性脂肪の分解を促進し、脂肪酸を、脂肪細胞内に取り込む。

つまり、インスリンの働きが不十分になるとブドウ糖をエネルギー源としてうまく利用できず血糖値が上がるだけでなく、筋肉をつけたり、また脂肪が蓄えられずにやせていく流れが生じます。
インスリンは体を作るのに必要不可欠なのです。血糖値のコントロールが悪くなると体重が落ちるのはこのためです。

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